以下は、週間金曜日201163日号に掲載された横田一氏のルポルタージュ「東京電力の正体」の引用と要約です。「報道機関に対する多額の広告や脅し、新聞記者(エネルギー担当)の子どもを電力会社に採用する“コネ入社”、政党への多額な政治献金、官僚の天下りを多年にわたって保障する」など様々な手口で政治家や官僚や報道機関をコントロールしてきた実態が報告されています。

 

〔以下、引用・要約〕

 

 5月27日号〈最初の見出し部分のみ〉

 

メディアが東電を批判できない理由

 

 

6月 3日号〈引用・要約〉

動き出した電気事業連合会

     横田一

 

・国民にツケを回す被災者無視の「賠償」を画策

・閣議決定された政府の原子力損害賠償スキーム(枠組み)に対抗して業界団体の電事連が東電救済を狙いとする「要望書」を提出。

 

 

自然エネルギーヘの転換に続き、「送発電分離」(注)を表明した菅直人首相と、賠償費用の負担軽減や地域独占体制を温存しようとする東京電力や電力業界のせめぎ合いが激しさを増している。

 

 5月18日、「電気事業連合会(電事連)」が、閣議決定された原子力損害賠償スキーム(枠組)に関する要望書を経済産業省に提出。

 

〔要望書の内容〕

 

@原発継続の重要性を強調した上で、原子力は国策によって進められてきたものであり、原子力損害賠償法にも国による援助が明記されているとして、「東電だけでなく国も賠償責任を果たしていくべき」と主張。

 

(これは無限責任を負うべき電力会社が国民に負担を回そうということ)

 

A「事業収支に影響を与えないような制度とすることを要望」するとともに、電力会社の利益を生み出してきた送発電一体の「地域独占体制」の温存も求めた。

(「送発電分離」を阻もうとしたもの)。

 

B電事連の会員は、各地の電力会社。(・・・)「実態は、東電を筆頭とした電力会社の地域独占体制を守る既得権益集団。

 

〔不誠実な賠償の実態〕

 

@4月30の東電の謝罪集会で長谷川氏(高濃度の放射能に汚染された福島県飯館村の酪農農家)は、賠償内容を至急明らかにするように求めたが、2週間経っても肝心の東電から回答がないため、将来の事業再開に必要な賠償請求案を作成。

 

(内容)

エサ代・必要経費を除く、借金を含む生活費を補償せよというもの。

飯館村の菅野典雄村長も弁護士もこの案に賛同。「酪農農家は、搾乳機や牛舎などの設備投資の借金を返済しながら利益をあげてきたが、原発事故で収入がゼロになったのだから、賠償費用を東電は負担すべきは当然」。

 

(運動)

 5月20日、永田町での院内集会で長谷川氏と若手農家の田中一正氏はこの賠償請求案を説明・要望書を国会議員に提出。無回答状態の東電に、被災者の実態に即した賠償内容を求める動きが始まった。

 

(山本太郎のコメント)

出演予定番組が潰れた俳優の山本太郎氏が「賠償をして途方もないお金がかかるから(20ミリシーベルトに引き上げて住民を)国は見殺しにしょうとしている」

(東電の賠償費用を軽減する一種の救済策ではないか? 事実、まともな賠償は行われないまま放置されている。)

 

 

政治献金と天下り受け入れ

 

 束電は被災者の要望を聞き流す一方で、電事連を介して政府に負担軽減を求めている?

 

Q こうした自己中心的な行動がまかりとおる背景は?

 

A 東電によるこれまでの政治家への献金や役人OBの天下り受け入れなどの便宜供与。

 

例)

1)自民党の政治資金団体「国民政治協会」には、電力各社の幹部が献金。

2)「電力総連」も、民主党の国会議員に脱原発を訴えないという文書にサインさせた上で選挙支援。

 

3)経産官僚の電力会社への天下りも日常化

(4月13日と5月25日に塩川鉄也衆院議員(共産党)は、過去50年間に68人の官僚が電力会社に天下っていると国会で追及。うち東電に天下った経産官僚は5人)。

 

 経済ジャーナリストの於沢弘氏の発言。

「官僚OBがいるだけでいい。OBが高給をもらう電力会社の要求を、役所が大幅に切り込むことはしなくなるため」。

『普段は何もせずに座っているだけで結構です。電気科金値上げなどの時は役所の後輩たちにニラミをきかせて下さい』ということ」

 

賠償問題を左右する送発電分離

 

Q 上記のような便宜供与で、政治家や官僚や記者をコントロールし、都合のいい要求を貫徹していく実態をどうしていくべきか?

 

A こうしたロビー活動に対抗するには、公開の場で議論をすることが重要。

  

吉井英勝衆院議員(共産党)は、軽産省に東電の資産について資料請求し、公開させた。

 

Q その規模は?

 送電網資産額は2009年度第3・4半期時点の簿価で2兆999億7600万円。変電設備と配電設備も含めると簿価の合計額は約5兆957億円になる。

(内訳は変電設備が約8394億円、配電設備は約2兆1563億円)。

 

 東電は5兆円もの資産を有しており、「送発電分離」をすれば、被災者が要望する賠償額を支払える余地はある。

 

「送発電分離(注)」が、公開の場で議論されれば、実現可能性は確実に高まる。 

 

だが、・・・経産省は「エネルギー政策賢人会議」を議論の場としようとしている。

 

Q この「会議」の性格は?

 

「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長は、「電力会社の地域独占体制(送発電一体)を温存してきた経産官僚が著名な有識者を集めて振付ける“カムフラージュ会議”だ。まな板の鮭が包丁を握るようなもの」と問題視している。

 

 

(注)一つの電力会社が各地域の送電と発電を独占するのをやめ、それぞれを分割して電力を自由化する構想。

 

〔要約は以上〕

 

 福島第一原発の大事故は、発生してから2年以上たっても廃炉どころか汚染物質放出の終息のめどさえ立っていない「史上最悪の原発事故」なのですが、当初から政治家も官僚も「事故原因と責任を追及し徹底的に再発を防止する」、という当然の立場をとれなかったのは一体なぜなのか、「脱原発」を打ち出した菅直人首相が周囲の政治家からも官僚からも袋叩きになったのはなぜなのか、横田一氏のルポルタージュによって、かなり見えてくるように思われます。 

(2013年7月付記)

 

 2020年の東京五輪招致を巡って、欧州のマスコミから「汚染水処理の杜撰さ」が追及されましたが、結局、民主党政権の時代に作られた賠償スキーム(枠組)が大きな問題を残してしまったということです。

 なぜ、そのようなものになってしまったのか? 横田一氏のルポはその疑問に対する回答を提供してくれています。

 なお、東京五輪招致に際して安倍首相が行ったプレゼンの問題点についてはこちらです。

(2013年9月付記) 

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