私は、福島第一原発の爆発事故が起こった直後から(国や東京電力による情報提供が限られている状況の中で)自分なりの発信をしてきました。

 

 以下の通り、まとめておきたいと思います。

 

2011.03.12

 

大地震・大津波・メッセージ 

 あまりの惨状に言葉を失います。何ということでしょう。しかも、余震の影響以外にも・・・。

 

「12日午後3時36分頃、東京電力福島第一原子力発電所(福島県大熊町、双葉町)1号機建屋付近で、ドーンという大きな爆発音とともに白煙が上がり、原子炉建屋が骨組みを残して吹き飛んだ。」
                  読売新聞 2011 312()1650分配信

 米国スリーマイル島の原発事故を上回る大事故になっていることは間違いないようです。
 
 何とか、原子炉・格納容器そのものが溶融するという最悪の事態にならないこと、そして被災された多くの人々がこの未曾有の苦境のなかで何とか生き抜いていかれることを祈るばかりです。

 

 上記に関わるコメントのやりとり

 

2011.03.16

 

福島原発 情報公開と適切な対応を  

 

 以前、私が読んだ『東京に原発を』(広瀬隆著)という本には「大地震が起これば、原発の大事故は防ぎようがない」、という趣旨の記述がありましたが、不幸にして現実はそのとおりになってしまいました。

〔なお、私は広瀬氏の本を読んだだけでなく直接講演を聴いたことがありますが、参考になる点と同時に問題点(不確かな情報をまじえて不安をあおる)も感じたことを付記しておきます。(322日)〕

 私自身、原子炉の状態以上に気になっていたのは「水温の上昇している使用済み核燃料プール」でした。(何年分も貯まった「使用済み燃料」が持つ放射能は原子炉内の放射能をはるかに上回る) 平常時は、熱と放射線を出し続ける「使用済み燃料」をプールの中で(水を)撹拌しながら冷やし続けるのですが、停電のためそれが不可能になっているのは危険な状態なのです。

 私は一昨日(3月14日)、移動式の「発電機」を福島原発に持ち込むことが急務であると考え、地元に近い島根原発にも問いあわせましたが、専門の作業員と「移動電源車」を派遣し、現地に到着しているはず、とのことでした。
 「“破局的な事態”(⇒「より悪い事態」に修正 3月23日:末尾 注)を防ぐためには」原子炉も使用済み燃料も冷やし続けることが大切です。電力会社の相互協力を含めて、「『さらに悪い状態』を必死で食い止めようとしている社員・作業員(加えて現地に派遣されている自衛隊員や警察官、消防隊)のがんばり」に望みをかけるしかないのが現状です。

(ところが、送電線の損傷等によって「移動電源車」も接続不能であった、消防隊の放水の時点で1号機は完全に炉心溶融を起こしていたこと等が、後日明らかになりました。)


 ただ、それとは別に私自身、政府や電力会社に言いたいことがあります。

 「これまでの原発推進政策」については「現時点で」言っても仕方がないとしても、国民の命と健康を守るために「正確な情報を提供すること」は絶対に譲れないポイントです。
中でも気になるのは「○○シーベルトの放射線量は健康に影響を及ぼさないレベル」といった解説。これは、次の二つの点で問題があり、補足を必要とします。

1、「人体に影響がないレベル」というが、急性障害が出るか否かだけで、人体にまったく影響がない放射能はない。
 
小出裕章・京大原子炉実験所助教授

2、仮に空中を飛び交っている放射線が「低レベル」だったとしても、その放射線を出している「放射性物質」(いわゆる死の灰)を体内に取り込んだために起こる「内部被曝」の危険性はある。 〔取り込まないための注意・対応が必要である〕

 このような事実も含めてきちんと「情報公開」し、冷静でしっかりした対応を国民に呼びかけていくべきだと考えるのです。このたびの初期に行われた発表は「何か隠しているのではないか」という印象を多くの人に与え、不安を膨らませていった面がおおいにあるのではないでしょうか。

 原発の危機的な状況は、(日本の観測史上空前の地震・津波を)被災された皆さんにとってあまりに「とんでもない状況」と言うほかはありません。そして、このような状況になってしまった原因として、初期の段階で東京電力が「事故の重大性を隠しながら内部で処理しようとしたこと」が大きいのではないか、と思えてならないのです。

  「政府や電力会社」は国民に信頼されるような明確な姿勢で「情報公開」をおこない、それを受けて個々の国民は冷静で適切な対応をしていくこと、 「ともに生き抜いていく」ためには「緊急に支援を必要としている地域」を中心に考え、行動していくことの大切さを確認していくこと(例えば「買いだめ」をせず、被災地への物資の供給を最優先にする等)が大切ではないでしょうか。

 原発をめぐる今の緊迫した状況は、被災者だけでなく全国民を「当事者」にしつつあります。不本意ながら子どもさえも巻き込んだ息の長い闘い、「何とか大人がふんばっていかなければ」と考えるのです。

(注)3月16日の時点では、「破局的な事態」(⇒考えうる最も悪い事態)について充分検討できていませんでした。「チェルノブイリ型の暴走事故にはならないだろう」とは考えていましたが、「破局的な事態」という表現はそのような(暴走事故の)イメージにもつながるため修正いたします。

 なお、 「想定しうる一番悪いケース」について北村正晴氏(工学博士)らが検討した結果がアップされていましたので紹介しておきます。

5月18日付記

 北村正晴氏の丁寧な検討と「チェルノブイリ型の暴走事故になることは考えられない」という結論は、確かに科学的検討もしっかりしており説得力がありました。しかし、3号機の爆発については「想定できなかった暴走事故であった可能性」も指摘されています

 また、事故が収束しないまま放射性物質を出し続けることで、福島県の土壌の汚染はチェルノブイリに匹敵することが現時点では明らかになっています。爆発の性格や規模にかかわらず、複数の原発が同時に被災して起こった福島原発の事故は「いまだに収束の見通しさえ立っていない史上最悪の人災」になっていることを残念ながら認めなければならないでしょう

 

2011.04.17

 

福島原発の現状と今後(2011年4月中旬)  

 

 福島原発 情報公開と適切な対応を316日にアップした拙ブログ記事)に対して(現地福島の方から)切実なコメントがよせられました。

 私にできる範囲でともかく応答したいと思います。

>チリ落盤事故では 救出用の穴が壊れた時のために他の穴も掘り進め、わざと長めに「クリスマスまでには助ける」と知らせました。実際はそれより早く救出され、精神的不安が最少で済みました。

>原発も、ぬか喜びさせては奈落に突き落とすことを何度も繰り返す愚。本当に被災者を思えば、「完全に安全宣言できるまでには●●年の予定。けれど早く帰れるように尽力する。それまで避難先で新しい生活を考えて下さい」と知らせるべきなのでは

  全くそのとおりです。大体、政府は4月12日にもなって国際評価尺度「レベル7の事故だ」と発表しました(事故発生当初は「レベル4」だといっていた)が、原子炉建屋が爆発・損傷した1ヶ月前の時点で「レベル5」のスリーマイル島の事故をはるかに上回っていること 私でさえわかっていたのです

 政府や東京電力が「ぬか喜びさせる」傾向が強い理由は、主に次の点でしょう。

 (危険性が指摘されても「安全」を唱えながら)「国策として推進してきた原発建設」の結果、とんでもない事態が発生してしまった。責任を背負いきれない状況の中で、政府自身が「被害を小さく見せたい、これ以上悪い状況にならないと思いたい」ということでしょう。

 しかしながら、数ヶ月で収束する可能性はきわめて低いというのが現実です。なぜなら、原子炉や格納容器の損傷した部分をふさぐなどということはほぼ不可能である(高い放射線のために、問題の部分に近づくことさえできない)からです。

  現在、原子炉から漏れ出した放射能の高い汚水を外づけのポンプで再び原子炉に戻す、という構想がたてられていますが、この工事もうまくいくかどうかわかりません。仮にうまくいったとしても何ヶ月かかるだろうか、という状況です。

 もう一つの問題は、より悪い事態が起こる可能性も少なくないということです。確かに、現時点では、爆発が起こって原発の建屋が破壊された直後よりは飛散する放射性物質は減っています。また、チェルノブイリ型の暴走事故に発展することはないだろう、という「専門家」の現状把握も妥当だと思います。

 しかし、今後も水素爆発・水蒸気爆発が起こったり、「炉心溶融」(核燃料が過熱して融解すること)の進行によって原子炉の底が完全にぬけてしまう可能性はあるのです放射能の高い汚水がどんどん増えていく現状が災いして、原子炉内の冷却がままならない状況も予想されるからです。

>楽観して、すぐに帰れるから転校手続きはしないという親子がたくさん残っているのです。あっという間に戻れた時は幸運として喜べばいい。そうじゃなかった時を想定して、活動開始すべきではと。

 そのとおりだと思います。今後、大きな水素爆発・水蒸気爆発や炉心溶融によって原子炉の大規模な損傷が起これば、飛散する放射性物質の量も激増するからです。その場合、爆発後に急いで原発から離れる必要が生じますから、そのための時間を稼ぐためにも50キロメートルくらいは離れておいたほうがよい と考えます。

>福島の被災教師は、もちろんボーナスは出ません。長期研修扱いで、仕事も無く、時間つぶししている状態。他県で講師登録するにも、戻れるかもしれないという希望が捨てきれないので行動できない。

 現在、被災して別の場所への移動を余儀なくされているみなさんは、1年やそこらで戻れる可能性は極めて小さい、ということを踏まえて今後の計画を立てる必要があると思います。

 行政機関からの情報に対する信頼は低い状況のなかで、個人の行動について判断も難しくなっているわけですが、スウェーデン国立スペース物理研究所の山内正敏氏が、分かりやすいアドバイスをネット上で行っておられます

  私も、知人のブログ「スウェーデンの今」で得た情報ですが、参考にしていただければ、と思います。

 また、京都大学の小出裕章氏へのインタビューをまとめたブログもありましたので、ぜひご覧ください。

 

2011.05.17

 

菅内閣の英断と、原発事故の「主犯」

 

 自民党総裁が17日の役員会で「国民の不安を解消できないならば内閣不信任案も考えなければいけない」と表明したのだそうです。

 政局がらみの発信は個人的判断でなるべく控えめにしてきましたが、1、少なくとも「原発事故にかかわる国民の不安」に関する責任の多くは、これまでの自民党中心の政権にあること、2、菅内閣は自民党中心の内閣ではできなかったであろう英断を実行していること、の二点についてはこの際明言しておきたいと思います。

 まず2、「菅内閣の英断」について

  いうまでもなく、「浜岡原発の停止要請を行い現実に停止させたこと」、「原子力に傾斜していたエネルギー計画を白紙に戻して検討し直す方針を明確に打ち出したこと」、の2点です。歴代の政権が政・官・財一体でつくってきた「原子力村の雰囲気(菅首相)」に抗して、上記の方針を明確に打ち出したことは間違いなく英断だと考えます。

 浜岡原発だけでいいのか、という問題はもちろんありますが、今後進めるべきエネルギー政策としては、全く妥当な方向性だと考えるものです。

 次に1、「原発事故の責任」について

 私は、現政権の対応が全く適切だったと主張しているわけではありません。とりわけ、事故や汚染にかかわる「情報公開」に関しては、国民のパニックを恐れるあまり適切さを欠いていたと考えます。〔このことは、すでに拙ブログ記事(3月164月17)にも明記しておきました。〕確かに、情報公開の遅れが住民の被曝につながったという一点に関しては、致命的な間違いだったといえるでしょう。(下記20121214日の追記参照) 

 しかしながら、「原発事故への初期対応が悪かったからメルトダウンなどの大事故になった」といった主張に対しては根本的に疑問があります。冷静に考えれば考えるほど、「有効な処置はなかったのではないか」と思えるのです。(この点については、316日の見解を一部修正することになります。) 

 まず311日、福島原発の全電源が喪失して「事故時の命綱」ともいうべき「緊急炉心冷却装置(高い圧力をかけて原子炉に水を注入する装置)」が作動しなくなってしまいました原子炉内は「高圧」だからこそ「圧力容器」といわれるわけです。淡水だろうと海水だろうと通常の方法で水を注入することは不可能です

 それではどうすればいいのか。放射性物質を大量に含んだ原子炉内の「空気」を外に出して原子炉内の圧力を1気圧にすれば、注入も可能だったでしょう。しかし、あまりにも放射線が強すぎて人間が近づけず「初期の段階でその操作は不可能だった」とも報道されています。

 したがって、消防用のホースなどで海水を注ぎ続けた作業は「核燃料プール」の水を補うには一定有効だったかもしれませんが、原子炉に水を注入することには当然ならなかったわけです。「核燃料の過熱⇒メルトダウン」は福島第一原発が被災した時点でほとんど必然の流れであったと考えられます。(⇒20121214日追記)

 私は昨日、別の原発の職員に率直な質問をぶつけました。「このたびのような被災を受けてメルトダウンを防ぐような初期対応は果たして可能だったのか」と。
「極めて難しい。ほとんど不可能だったのではないか。」 これが、従来原発の安全性を強調してきた職員の回答だったのです。
 『チェルノブイリの真実』(講談社)で広河隆一氏が述べたこと
私をがく然とさせているのは、大事故が起こったときにどう対処すればいいか、いまだにわかっていないということだ」という言葉が思い起こされます

 「想定外の災害」ということを「原子力村」の人々はいいたがるようですが、過去に起こったことのある地震や津波は当然「想定」しておかなければなりません

 〔例:M9.3のスマトラ沖地震と津波(地形によっては34mに達した)〕
 東北の海岸地形は津波が高くなりやすいということは従来から指摘されていた事実です。

 以上から判断して、地震や大規模な津波の起こりやすいこの日本列島において事故を防ぐ最善の対応は、「最初から原発を建設しないこと」であり、次善の対応は「チェルノブイリ事故後に稼動を停止して、使用済み燃料プールも低温で安定した状態にもっていくこと」以外になかった、と考えるのです。

〔従って、根本的な政策の転換が必要だった(現時点においても必要である)というのが私の立場です。実際、2004年にスマトラ島沖地震、そしてこのたびの大地震、10年以内にM9.0以上の地震が「西太平洋のプレートの境界」で立て続けに起こっているわけです
 これから10年以内に同規模(それ以上)の地震が起きないと断言できる人は誰もいないでしょう。(520日付記)〕

 私が、「菅内閣の浜岡原発停止要請は英断である」、「
このたびの原発事故の責任の多くはこれまでの自民党中心の政権にある」と判断している根拠は以上です。

 緊急に対処すべき事柄が山ほどある現在、「本来の責任者たち」は「内閣不信任案」を出して政局を有利に持っていこうというのでしょうか。そんな党利党略はいい加減にしてほしいと考えるのは私だけではないと思います。

5月24日追記 : 23日の国会を見ても「本来の責任者」の代表は、 「『海水注入の中断』という初動のミスが大事故を引き起こした」といった揚げ足取りをしながら、「政局」に持っていこうとしているようです。この批判が的外れであることについては「日本経済新聞(電子版)」でも専門家の言葉として紹介されていますので、ごらんいただければと思います。重大事故は、全電源喪失後、はるかに早い段階で進行していたのです。

  もっとも、現政府も従来の政策を踏襲していた点では責任があるわけですが、前政権政党が「ひとごとのように」責任追及できるような問題ではありませんね。

 20121214

 追記1 なお、『検証・福島原発事故・官邸の100時間』(木村英昭著)によれば、「文科省はSPEEDIをもっており、事態の深刻さを危惧した米軍の要請で、ある職員はその情報をパソコンで自動的にアメリカに流すことになるが、そのSPEEDIの存在を、文科省担当者も経産省保安院も、政府首脳に伝えることをしなかった」ということです!

 ここでは、政治家というよりも保安院をはじめ危機に対応すべき官僚組織こそが機能不全に陥っており、必要な情報を総理大臣にさえも伝えていなかった、という問題が浮かび上がります。 

 追記2 原発の全電源喪失の直後に「海水注入」は不可能だったのではないか、と上記記事で私は述べました。それは、理論的にも実際的にもそのとおりなのですが、ある段階で「幸運にも」消防車による海水注入が可能となったことを、菅直人は「回想記」で次のように述べています。 

 「原子炉が、いわば紙風船にガスを入れた時に、弱い継ぎ目に穴が開いて内部のガスが漏れるような状態になったと思われるのだその結果、一挙に致死量の放射性物質が出ることにはならず、また圧力が低下したので外部からの注水が可能になった
 破滅を免れることができたのは、現場の努力も大きかったが、最後は幸運な偶然が重なった結果だと思う。」

 

2011.06.01

 

国際原子力機関(IAEA)の報告  

 

「津波災害を過小評価」=調査団、報告書要旨を提出―福島第1原発事故でIAEA
                                                              時事通信 61()139分配信

 東京電力福島第1原発事故で、来日中の国際原子力機関(IAEA)の調査団は1日、「日本の原発が津波災害を過小評価していた」などとする事故報告書の要旨をまとめ、政府に提出した。
 報告書は、福島第1原発が地震直後に運転を停止できたものの、14メートルを超える津波でほぼ全ての非常用電源を失ったことが事故の要因と認定。
同原発では困難な状況の下、懸命の作業でベストの対応が取られたと評価した。

 一方で、日本の原発が津波災害を過小評価してきたと指摘。原発を運転する電力会社などが全ての自然災害のリスクについて、適切に防御策を講じるべきだとした。
 さらに、原子力規制行政のあり方にも言及。経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全委員会による規制についても、各機関の独立性担保と役割の明確化を進めるべきだと提言した。

 さて、そもそも国際原子力機関(IAEAというのはどのような団体なのでしょうか。

 核拡散防止のための査察を担うことから「核の番人」と呼ばれ、原子力の平和利用促進軍事転用防止を図る国際機関。本部はウィーン。      〔
朝日新聞 キーワード解説より〕 

 この団体の報告によると福島第一原発では「ベストの対応がとられた」 (言い換えれば「被災した時点で大事故(メルトダウン)を防ぐための有効な対応はなかった」)ということであり、私が5月17日の記事で述べたことと同じ結論になっています。

 ただ、用語解説のとおり国際原子力機関は原子力の平和利用(つまり原子力発電)を促進するための専門機関なのですから、「原発反対」の私の見解よりもはるかに説得力がありますね。

 原発の安全性を強調して建設を促進する専門家たちが「(福島第一原発で)大事故を防ぐよりよい方法はなかった」、「あれがベストの対応だった」と評価しているのですから。

国会で野党は「原発事故への対処の悪さ」も含めて追及の的にしているようですが、IAEAの見解は参考にしないのでしょうか。「東電と政府が責任をなすり合っている」という発言もあったそうですが、自らの責任を棚に上げて現政府に責任を押しつけようとしているのは「前政権政党」では? (5月17日の記事) 緊急に対処すべきことが山積みの状況で政争に明け暮れるのか! 「内閣不信任案」への憤りは被災者の中にも広がってるようです。 全く当然でありましょう。〕

 

  ただ、IAEAの後半の見解については一致する点とそうでない点があります。

 IAEAは(1)「津波災害を過小評価してきた」、(2)「全ての自然災害のリスクについて、適切に防御策を講じるべきだ」、(3)「保安院と原子力安全委員会による規制についても、各機関の独立性担保と役割の明確化を進めるべき」と述べています。

 まず、(3)については菅首相も報道機関も述べるとおり「あたり前のこと」です。

 しかし、(1)については異議があります。 「想定外の大津波」のせいにしているように読めるからです。(日本の各地の電力会社も「原子力村」全体もそうですが・・・)

 福島第一原発1号機では、津波以前に地震の揺れによって緊急冷却系のパイプが破断し、放射性物質が漏れ出したことが明らかになっています。いざというときの命綱である緊急冷却系が役に立たなくなっていたということは、津波以前の地震の段階で「重大事故に向かっていた」と考えなければなりません。

  また、(2)についてですが、IAEAの見解には「適切な防御策が可能であり、それを講じて原発を推進すべきだ」という含みがあります。

 しかし、それは本当に可能でしょうか。仮に津波をさえぎるための「高い壁」を建設したとしても、津波は大地震にともなって発生するわけですから「高い壁」が地震で倒壊・破損する危険性があります。仮にひびが入るという程度で済んだとしても、そのあと巨大な津波によって簡単に破壊されてしまう危険性は大きいのではないでしょうか。

 「絶対に安全な原子力施設」をつくろうとするよりも別の発電(自然エネルギー)などに切り替えるほうが現実的だ、と参議院行政監査委員会で発言したのは、もともと原子炉格納容器の製造に関わっていた後藤政志さんです。

 今後、どのようにしていくべきか?

 エネルギー政策についてソフトバンクの孫社長を中心にソーラーパネルの建設を一気に進めていく構想が具体化しつつありますが、好ましい方向であると思います

 しかしながら、そのためにも「原発を批判すれば芸能人は干される」、「原発を真っ向から批判するジャーナリストは干される(一年前、あるフリーのジャーナリストに聞きました)」、このようなとんでもない現実! は明らかにしつつ打破していかなければ、と考えるのです。

 

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