岩美町への提言

2004年 1月25日

                                           NPO岩美自然学校

                                 NPO岩美あくてぃぶカンパニー

                                 NPO岩美ネットワークギルド

1、地域の将来像を描く必要性 

 市町村合併の全国的な大きな流れの中、単独での存続を選択した岩美町。状況の厳しさも指摘されますが、活力ある町づくり・地域づくりを進めていくためにもしっかりと地域の将来像を描いていくことが大切でしょう。地域に根ざす魅力ある活動の創造につとめるNPOとして、私たちは地域の資源に着目し、環境との共生、地域内循環、自律を中心とした町づくりを提言します。

2、自然環境を中心とする岩美町の資源

 2001年度、鳥取大学教育地域科学部(地域科学課程)の学生・教官によってまとめられた「岩美町に関する地域調査実習報告書」は、@「素晴らしい自然とその生い立ち」、A「新エネルギービジョンの策定」、B「生活習慣と生活の豊かさに関する調査」、という3つの柱で構成されています。それによると、浦富海岸をはじめ美しく豊かな自然に恵まれた岩美町においては、ヒゴタイ、ミズアオイ、エビネ、ワカハマギク、キンギンボク、カキツバタなど、絶滅危惧種に該当する植物が48種残存しているのみならず、ハッチョウトンボ、ワスレナグモ、コダカノゲンゴロウをはじめ昆虫類・哺乳類・鳥類・爬虫類、淡水魚なども含めた、多くの希少動物が確認されているということです。(@「素晴らしい自然とその生い立ち」)

 また、「洗井」「蕪島」「黒谷」などを中心とする小水力発電(小川や渓流などの流れを利用して電力を得る発電)の可能な地域や風力発電の設置可能台数、さらには温泉の熱エネルギーや岩美町に多数存在する森林に注目した森林バイオマスエネルギーの計画的活用の可能性についても言及されています。(A新エネルギービジョンの策定)

 そして、岩美町の男女697名(50歳以上)を対象に実施した意識調査結果でも、「自然などの環境を守っていったほうがよい」について「そう思う(71.4%)」、「ややそう思う(21.7%)」を合わせると93%以上の人が自然環境などを大切にする必要があると回答しています。(B生活習慣と生活の豊かさに関する調査) 

 このように、豊かで美しい自然環境は岩美町のかけがえのない資源であり、それを大切にしていく必要性を多くの人たちが感じていることがわかります。

 

3、「地域環境力」を高めていくこと

 それでは、私たちはどのような地域の将来像を描いていけばいいのでしょうか。さしあたって、次のような環境省の提言は、大いに参考になると思われます。「(さまざまな観点から地球環境問題が浮上している現状の中、)地域の持続可能性(さらには地球全体の持続可能性)を保っていくため、環境との共生、地域物質循環、自律を基調とした「エコビレッジ」と呼ばれる地域社会形成の考え方が提唱されています。そして、そのような地域社会を形成していくためにも、地域の資源を把握するとともに個人、家庭、学校、企業、地方公共団体、NPOなど多様な主体が連携を行っていくことで、地域がひとつの方向性を共有し、各主体がよりよい環境、よりよい地域を作って行こうとする意識・能力=「地域環境力」が高まっていきます。」

         〔環境省『平成15年版 図で見る環境白書』より ( )内は引用者〕

 そして、さまざまな活動や工夫を通してこの「地域環境力」を高めながら、環境との共生、地域内循環、自律を基調とした岩美町、素晴らしい自然環境をしっかりと生かした魅力ある岩美町を創造していくことを私たちは提唱します。

 すでに2001年の5月、鳥取環境大学の吉村元男氏は岩美町の将来を展望しつつ「岩美自然学校+岩美ゼロエミッション農場=岩美小さな地球村構想」を提唱されています。

 この岩美小さな地球村構想は、「地球温暖化防止」「生物多様性保全」という地球サミットの精神を、岩美町という地域の中でその資源を生かしつつ具体化していこうというものです。構想の特徴的な部分を列挙しておくと、「岩美自然学校を軸に、岩美の農林水産業の活性化を目指したゼロエミッション農場を一体化させ、岩美の海、山(森)、農業地を舞台にして、将来の地球を考え、地球益のために働く塾(村)を構想する」、「岩美の自然とともに生きる地球環境時代の農林水産業へ」、「岩美中山間地域型資源循環システム農場」、「生ごみの資源化(肥料、電力)」、「自然エネルギー開発(太陽光、風力、バイオガス、水)」、「間伐材による30mドーム」、「体験・学習・実験を通した岩美の新しい農林水産業の再生」、「循環型牧畜業」、「持続可能な農林業」などがあります。

 これは、「地域環境力」を高めながら、環境との共生、地域内循環、自律を基調とした岩美町、素晴らしい自然環境をしっかりと生かした魅力ある岩美町を創造する、という私たちの主張と基本的に一致する構想として積極的に検討していきたいと考えます。

 

[資料1] 『地域発ゼロエミッション』(吉村元男著)の趣旨

 人間の活動によって生み出される廃棄物を資源化し活用していくことで、最終的に排出される物を限りなくゼロに近づけていくという「ゼロエミッション」の取り組みは、企業を中心に先進的な取り組みが各地で進んでいる。(もともと、地球環境の破壊をくいとめるために国連大学がこれを提唱した)だが、本当に環境破壊をくい止め循環型社会を実現していくためには、家庭で生じるゴミ・廃棄物も含めて資源化しゼロに近づけていく「地域ぐるみの取り組み」が必要であるというのが基本的な発想。この著書では、工業のみならず農林水産業を柱とするゼロエミッションの取り組みがいくつも紹介されている。

 

 ゴミ・廃棄物を限りなくゼロに近づけ、岩美町の素晴らしい自然を守りながら、持続可能な農林水産業を作り出していくためには、この発想はきわめて貴重でしょう。

 また、似かよったものとして山形県立川町の「エコグリーンタウン立川構想」も参考になるものと思われます。地域の強風を活用して風力発電の導入を進めてきた立川町が、取り組みを総合的に進めて新しい構想を「自然に優しい環境と共生の地域づくり」としてまとめたものです。

 

[資料2] エコグリーンタウン立川構想 

             割愛

 

 岩美小さな地球村構想とエコグリーンタウン立川構想との共通点のひとつとして挙げられるのは、家庭で生じるゴミ・廃棄物も含めてゼロに近づけていく「地域ぐるみの取り組み」を重視する点であり、そのために「体験型の環境学習施設」を作っていこうとする点です。

  確かに、地域がひとつの方向性を共有し、各主体がよりよい環境、よりよい地域を作って行こうとする意識・能力=「地域環境力」を高めていくためには、地域に住む人たちが環境に関する学習を積み上げながら意識を共有していくという営みが大切でしょう。私たちは「学習施設」を設置することの重要性と合わせて、岩美町内に存在する小・中・高等学校における環境教育の充実と、学校と地域との有機的な連携の重要性、自然体験学習や新エネルギー・エコマネーについての研究等、NPOなどが主催する自発的活動の重要性を強調したいと考えます。

 

4、持続可能で魅力ある町づくりのための具体的取り組み

 以上のような基本的な考え方にたって、私たちは、以下の(1)から(6)の取り組みを提起いたします。

 

(1)岩美町全体で地域内循環の取り組み(資源を循環させ町内のゴミ・廃棄物を限りなくゼロに近づけていく[ゼロエミッション]の取り組み)を進める。

 生ごみの分別・堆肥化・地域での活用を進めている山形県長井市など、先進的な地域の取り組みに学びつつ、家庭、学校、企業、地方自治体、NPOなど多様な主体が連携しながら岩美町版の「地域内循環」を作り上げていく。

 また、分別された生ゴミ等を材料としたメタンガスの生産、そして発生させたメタンガスから取り出した水素を燃料電池に送り込み電気や熱に変換する、といった新しいエネルギーの供給方法についても積極的に検討し、具体化していく。

 また、現在岩美の3NPO(岩美自然学校、岩美あくてぃぶカンパニー、岩美ネットワークギルド)がモデル的に取り組んでいる「菜の花エコプロジェクト」についても、岩美町全体のプロジェクトとして具体化していく。

 

[資料3]山形県長井市のレインボープラン(生ゴミ堆肥化、地域内循環の取り組み) 

 長井市のホームページより

《基本構想》

 農家と消費者との協力により相互理解を深め、地域循環システムを創り出すことにより、有機資源のリサイクルを図り、環境改善と健康な食生活を生み出し、自然と人間の永続的な共存を図っていくために、次の目標を掲げ、計画を推進する。

《基本目標》

○有機物の再資源化

 市民生活で排出される有機物(生ごみ)の分別収集を実施し、その再資源化を図る。

○優良堆肥の生産

 家庭からの生ごみ、事業所からの産業廃棄物(有機質原料となるもの)、畜産廃棄物等を原材料として、優良な堆肥生産を行う。

○土づくり・有機農産物の生産

 優良堆肥の農地還元により、化学肥料等に頼らない自然生態系に即した土づくりを行い、有機農産物を作り出す。

○地産地消による農産物の流通

 地元で生産された安全な農産物を地元消費者の食卓へ提供し、健康な食生活を培う。

○農業担い手育成

 自然生態系を生かした農業の実践により生み出される農産物をブランド化し、高付加価値生産による所得増大により、農業担い手の育成を図る。

 

[資料4]鳥取県環境管理課、ワーキンググループによる研究・構想 

                  (「とっとり県政だより」2003年10月号)

 県では、地域固有の資源を活かした地域自立型エネルギーの導入を目指し、次のようなワーキンググループ(以下WG)を作り、市町村と共同で検討を進めています。

 ・岩美町支援WG 「生ごみメタン発酵発電システム導入の可能性について」

「生ごみ」を使った発電とは

(・・・)家庭やレストランから出る生ごみを発酵させてメタンガスを取り出します。このメタンガスを燃やして熱や電気を作ることもできますが、より効率よくエネルギーを回収するため、メタンガスから取り出した水素を燃料電池に送り込み電気や熱に変換するという仕組みが開発されています。

「生ごみ発電」の可能性

 生ごみ燃料電池による発電の実現のためには、生ごみの分別・収集方法などについて地域の方々と一緒に考えなければなりません。「生ごみ燃料電池発電システム」の検討は、まだ始まったばかりですが、家庭の生ごみ収集から燃料電池による発電までのシステムを導入している自治体は世界的にもありません。

 世界に先駆け、生ごみ燃料電池発電を実現できれば、環境先進県として世界をリードすることも夢ではないのです。

 

[資料5]菜の花エコプロジェクト(環境省『平成15年版 図で見る環境白書』より)

 滋賀県の琵琶湖地域における菜の花プロジェクトは、菜の花の栽培、菜種油の採油と利用、廃油や油カスの利用を地域内で事業展開するもので、環境保全・資源循環型の活動とビジネス活動が両立した取り組みとなっています。

 

(2)食を中心とする「地産地消」の取り組みを進める

 岩美町民ができる限り岩美町内で生産されたものを消費するという地産地消の取り組みは農林水産業をはじめ、岩美町の産業を活性化していくための重要な取り組みとなりうる。また、長距離輸送された生産物ではなく地元で生産されたものを消費していくことは、二酸化炭素を削減し、地球環境を守っていくことにもつながる。

 すでに、小中学校の給食などでは地産地消が意識的に取り組まれているが、学校に限らず岩美町民全体で取り組むことが大切であろう。

 学校、企業、地方自治体、NPOなど多様な主体が連携し、地産地消をアピールするため講演会を催したりバザーなどのイベントを積極的に企画していくことが大切である。

 

(3)自然エネルギーの導入に努める(エネルギーの地産地消)

 地球に優しいエネルギーである自然エネルギーを導入しエネルギーの地産地消を進める。

@国の補助事業なども活用しながら、小型風力発電システム、太陽光発電システム、家庭用小型燃料電池コージェネレーションシステム(電熱併給システム)の普及促進に努める。

A岩美町として生ごみメタン発酵発電システムの導入を進める。[(1)で既述] 

B教育機関を中心に自然エネルギーのシステムを積極的に導入する

 学校の敷地内に太陽光発電や風力発電などの施設を作り、環境教育に活用するとともに、地域における環境問題への取り組み、「ゼロエミッション」の取り組みの象徴としていく。

 

[資料6]『危機を考える』(編集、鳥取県防災監:岩下文広)より  「岩手県葛巻村では、風力発電所を有するほか、主産業の酪農から生じる牛の糞尿や森林から得られる間伐材をエネルギー源として利用する新エネルギーの街づくり宣言を行っている。」「新エネルギーの特質は…小規模な地域分散型エネルギーであること、子ども達への環境教育的な効果が期待できること、さらには観光や雇用面で地域の活性化に結びつく可能性を秘めていること、などを考え合わせると、この分野での地方自治体の果たすべき役割は決して少なくなく…」 (53〜)

※「さまざまな自然エネルギーを組み合わせながら、すべて自給し、廃棄物についてもリサイクル等によりいわゆるゼロエミッションを実現し、地球温暖化防止の必要性…等を学習し体験できる、このようなシンボル施設を作ってはどうだろうか。」(118)

(このような趣旨のシンボル施設=エコモデル施設は、地域の学校に作ってこそ子ども達への教育・地域住民への啓発に成果をあげることができるのではないか。)

 

(4)環境教育の充実

@町内の小・中・高等学校での環境教育を推進(後押し)していく

 「総合的学習の時間」等のテーマとして環境問題を取り入れていくよう奨励するとともに、学校単位で自発的に計画・実施されている「環境教育」や「実践」を後押ししていく。生徒自身が環境問題の深刻さを学ぶだけでなく、地域の資源・自然環境の素晴らしさを学び実感していく方法としては自然体験学習が有効であり、「総合学習」等のテーマとして取り上げていくことが望まれる。(そして、調査・体験実習などを含む生徒自身の主体的な学習である「総合学習」の成果を挙げるためには、クラスに対して1人ではなく数名のティームティーチングを保障するなどの条件整備が必要である。)

 また、小・中学校を中心とする環境教育の条件整備だけでなく、各学校で行われている環境教育の取り組みを町報でアピールするなど、さまざまな角度から「環境に関する学習」を積極的に奨励・推進していくことが大切である。

 

[資料7]岩美高等学校で進められていた環境教育(2002年「中学校向けの資料」より)

 総合A 環境・総合について

・「環境」をテーマにした「総合学習」です。環境について調べ学習をしたり、グループに分かれて学習した成果を壁新聞にまとめたりします。

・さまざまなテーマについてパワーポイントや資料などで学習するとともに、森林破壊などの問題とも関連して「紙すき」や「間伐材を用いたドームの組み立て」、(総合学習のBでは間伐材の「いかだ作り」)等の実習に取り組みます。

・生命の循環について具体的に学ぶためにも、有機肥料・堆肥などを用いた畑作り(野菜作り)などを取り入れます。できた作物を収獲、料理する「収穫祭」も行います。

  環境に関連する施設の見学や実習も実施します。

 

[資料8]長井市の教育 (『生ゴミ・堆肥リサイクル』(家の光協会)より

・レインボープラン(生ゴミの分別・堆肥化・地域内循環の取り組み)をテーマに子ども向けの紙芝居(「レインボーちゃんの冒険」)が作られ、保育園・幼稚園・小学校の教育に大きく活用された。

・小・中学校の環境教育に、教材としてレインボープランを使うことについても検討され、進められている。(子どもの教育の成否が、市の未来の姿を決める)

 

A町内全ての小・中・高等学校で学校版ISOの取得を目指す取り組みを奨励・推進する。

 鳥取県には、学校での環境に対する取り組みを県が独自評価する「県版環境管理システム(TEAS)」が存在する。岩美町における各校の取り組み・連携を奨励することで、最終的には町内全ての小・中・高等学校による学校版ISO(TEAS)の取得につながっていくことが望まれる。 

 

[資料9] 日南町の取り組み(日本海新聞 2003年 11月29日付)

 (日南町の)すべての小中学校(小学校8校、中学校1校)は9月、環境宣言を行った。教職員と児童生徒が一緒になって、環境に対する取り組みを県が独自評価する「県版環境管理システム(TEAS)」の取得に向けた取り組みを進めている。各校別に環境改善目標を立てて、さまざまな活動を展開。石見東小は、児童たちが使用済みのアルミ缶を回収しており、リサイクルして得たお金はネパールへの支援に役立てている。(・・・)これらの環境配慮活動は環境への意識を高め実践することがねらい。町では子どもたちの活動が、学校から家庭、地域から町全体へ広がることを期待している。

 

B環境問題に関する連続講演会なども積極的に企画・検討する

 学校と岩美町、NPOとの連携・共催という形で環境に関する連続講演会を開催することも積極的に企画・検討する。子どもの教育の成否が岩美町の未来の姿を決める、という観点だけでなく、学校を拠点に広く地域に参加を呼びかけ、大人たち自身が環境問題について学習し、地域ぐるみの取り組みにつなげていく貴重な機会とする。

 

(5)環境への取り組みと経済との両立

 以上のような環境への取り組みが、地域経済とも両立するような仕組みとして地域通貨・エコマネー(「地産地消」の促進や、「環境にプラスになるボランティア的活動」の促進を目的に導入する「その地域だけで通用する通貨」)についても研究し、具体的に取り組んでいくことが望まれる。

 また、環境大学等でも研究が進みつつある「エコビジネス」について、町として研究・奨励していくことが大切であろう。

 

(6)ボランティア活動やNPOの活動等に対する支援

 ボランティア活動をはじめとする、さまざまな活動を積極的に支援していくこと。例えば、@山陰海岸を中心とする清掃ボランティア、A人工林の保全を目的とする、間伐ボランティア、B岩美町での自然体験学習の推進、C新エネルギー・エコマネー等についての研究、などNPOをはじめとする様々な自発的活動に対する支援を行っていくことが大切である。そのような活動は、個人、家庭、学校、企業、自治体、NPOなど多様な主体が連携を行っていくことで、地域がひとつの方向性を共有し「地域環境力」を高めつつともに「街づくり」を進めていく上で、重要なカギとなる。

 

[資料10] 日南町の取り組み(とっとり県政だより 2004年1月号)

 広がる「にちなん環境林」での森林保全活動

〜日南町とNPO法人地域緑化センターとの協同〜

(・・・)「にちなん環境林」では日野川流域の人々やグループ・企業が「森林の保全」をテーマに自主的な企画を立て、森林ボランティア活動や自然体験活動をおこなったり、都市からも森林ボランティアが年2回訪れるなど、多くの人に活用され守られています。

 どうして「にちなん環境林」には活力があるのでしょうか。それは、「森林を守り水源を涵養することの大切さを知ってもらいたい」という町と、「緑のボランティアを育てたい」というNPO法人地域緑化センターとが協同してこれらの活動をサポートしてきたからです。(・・・)「にちなん環境林」での森林保全活動は着実に根付き、大きく広がっています。

 

  このような自発的活動が岩美町内でも活発になっていくことで、自然体験学習を含めた環境教育(子ども大人いずれをも対象にする)がさらに充実し、地域の素晴らしさがますます認識されていくとともに、「世界遺産」の候補にも挙がった山陰海岸等の素晴らしい自然を生かした体験型の観光地として岩美町が発展していくことにもつながっていくであろう。

 

 5、まとめ(地域の取り組みから地球の未来を創造する)

  以上、持続可能で魅力ある町づくりのための具体的取り組みとして私たちは(1)〜(6)を提起いたしました。以上の提起をふまえつつ私たちは、「温暖化防止に向けて地域で排出する二酸化炭素を大幅に削減する取り組み」の重要性を強く訴えます。

  先にも述べましたが、吉村元男氏の「岩美小さな地球村」構想は、「地球温暖化防止」「生物多様性保全」という地球サミットの精神を、岩美町という地域の中でその資源を生かしつつ具体化していこうというものでした。そして、美しく豊かな自然に恵まれた岩美町においては、絶滅危惧種に該当する植物が48種残存しているのみならず、昆虫類・哺乳類・鳥類・爬虫類、淡水魚なども含めた、非常に多くの希少動物が確認されており、それは町のかけがえのない資源・財産であることを強調いたしました。しかしながら、それらの希少植物・動物は文字通り絶滅に瀕しているといわざるを得ない状況があります。 

 現在、世界では、人間による環境破壊や地球温暖化にともなって生じた異常気象などが原因で、日々100以上の生物種が絶滅していると言われます。そして、国連によると、いま世界で毎日およそ 24,000人の人々が「飢え」あるいは「飢え」に関連した死因で亡くなっています。そのうち4分の3は、5歳未満の子どもたちです。実に 3.6 秒に1人の割合で子どもたちが「飢え」で亡くなっているのです。そして、その主な原因はやはり地球温暖化にともなって生じている「干ばつ」や「砂漠化」であるといわれます。

 このように、地球環境の現状は多くの人々が考えている以上に深刻であり、それを解決していくための「地域ぐるみの取り組み」が強く求められます。先に提起した、(1)地域内循環[ゼロエミッション]の取り組みにせよ、(2)食を中心とする「地産地消」の取り組みにせよ、(3)自然エネルギーの導入(エネルギーの地産地消)にせよ、いずれも環境を守り、二酸化炭素の排出を大幅に削減するものになるよう進めていくことが大切です。

 また、そのような取り組みを掛け声だけで終わらせないためにも(4)環境教育の充実や、(5)地域通貨の導入などの工夫、そして(6)NPO等の自発的な活動と行政との緊密な連携、が大切だということができます。

 そしてまた、一人ひとりが賢い消費者(グリーンコンシューマ)になって、ヨーロッパを中心に取り組まれている4R〔@Refuse(リフューズ)いらないものは買うのをやめる、AReduce(リデュース)買う量・使う量を減らす、BReuse(リュース)再利用する、CRecycle(リサイクル)資源に戻して再利用する〕に取り組んでいくことや、家庭や公的機関、事業所でのエネルギー消費を最小限に抑えていくことも大切です。ただ、私たちはそれらの取り組みを一人ひとりの善意と自覚だけに任せるのではなく、地域でともに学習し地域ぐるみで取り組んでいくことが重要であると考えます。そして、そのためには、現在環境省が奨励している「温暖化対策地域協議会」の結成についても検討・具体化していく必要があるでしょう。

 地域の取り組みから地球の未来を創造する営みをこの岩美町内で広げ、発展させていくことができれば、私たちは持続可能な社会のモデルを全県、全国、さらには全世界に発信していくことができるでしょう。そのような意味における、「環境モデルタウン」として新しい岩美町を創造していくべきことを、私たちは強く主張いたします。