少子化対策
社会と家庭の男女平等が子どもの増える国を作る
育児休業を男性に義務づけるなど、国連から世界一の男女平等国に認定されたノルウェー。女性が一生の間に産む子どもの数の平均(合計特殊出生率)は、日本より約0.5ポイント高い1.9で、上昇傾向にあるそうです。
例えば教育大臣、開発援助大臣など2度の閣僚経験がある国会議長のコッレ・グロンダールさん(56)は2児の母。ノルウェーで女性の国会議員は約36%で、日本を大きく上回ります。子育て中の母親も多数おり、議員の平均年齢は44歳。閣僚も19人中8人が女性だということ。
高水準の出生率を維持しているノルウェー。児童手当、保育施設の充実…。そこでは育児支援政策が網の目のように張り巡らされており、それが、女性議員輩出の背景にあるようです。あるいは、女性議員輩出の結果、という面もあるかもしれません。
〔以下 要約〕
12月のオスロ…厳しい寒さの中、平日の街を歩いていると、ベビーカーを押す父親、母親の姿(育児休暇中の親たち)を数多く見かける。
Q 2007年現在、ノルウェーで認められている育児休暇期間は?
最大で54週間。この間、出産前の給与の80%が支給されるが、100%の支給を求めても44週間の休暇を取得できる。
Q 休暇期間中の給与はどこから出る?
国民保険から給付され、企業の負担はほとんどない。
代理要員を採用する必要があった場合も、費用の大半を国が負担する。
Q 合計特殊出生率は?
ノルウェー。06年は1.9と、OECDの平均1.6を大きく上回る。(日本は右肩下がり)
Q ノルウェーにおける高い出生率の背景は充実した育児休暇だけか?
「すべての家族政策が同時に作用しているため」と指摘する。
ノルウェーでも、1980年代には出生率が落ち込んだ時期があった。81〜85年の合計特殊出生率は1.68、オスロ市内は1.38にまで低下。
当時の有給育児休暇は、母親の産前・産後に18週間。父親がシェアすることも認められていたが、休暇を取得する父親はほとんどゼロ。
Q どのようにして育児休業を取得する父親が増えていったのか?
政府は毎年のように休暇期問を延長し続け、89年には52週問(給与全額支給の場合は42過問)にまで拡大。
93年には、4週間を父親に割り当て、それを取得しなければ権利が消滅する新制度(パパクオータ)も作る。
→ これが功を奏した。その後、出生率は96年まで上昇し、1.88にまで回復する。
事例:子ども平等省に勤めるカーリン・ストウツペルード・スタイさん(39)。夫はオスロ市の公務員。
2人の問には11歳の娘と6歳の息子がいる。
娘が生まれたのは96年。夫妻はこのとき、合わせて12カ月の育児休暇を取得。うち、4週間はパパクオータを取得。
カーリンさんが仕事に復帰し、ハンスーグンナルさんが子どもと家で過ごした。
「職場でもすでに、男女にかかわらず誰もが育児休暇を取っていたので、同僚同士で仕事を補い合うのがごく自然になっていた」
休暇の消滅″と半ば強制的な制度としたために、現在では90%以上の父親がパパクオータを取得する。
Q さらに別の要因は?
数年前、現職の財務大臣がパパクオータを使って4週間の育児休暇を取ったことも普及に一役買った。
同休暇はその後6週間へ拡大。現在約20%の父親は、さらにその期間を超えて3〜4カ月の休暇を取っている。
「パパクオータによって、出産・子育てが両性にかかわる課題だという意識が一気に強まった」(ホーレ氏)。
Q 日本の実態は?
父親の育児休暇取得率はまだ1%にも満たない。
Q 保育施設・育児の条件整備は?
保育施設は80%をカバー 在宅育児にも補助金
現在、ノルウェーには6000以上ものデイケアセンターがあり、1〜5歳の子どもの釣80%をカバー。
デイケアセンターを使用せずに、在宅で育児を行った場合の補助金制度も充実させた。
※ 現在、1〜3歳の子どもを、デイケアセンターに預けずに在宅で育てる場合は最大で年間3万9636クローネ(79.2万円)が支給される。
※ 給付額は利用時問に応じて決まっており、デイケアを週32時間利用しても年7932クローネ(15・8万円)が支給される。
ノルウェーで実施されたある意識調査結果…女性と同居する男性の大半が「男性はもっと家事をするべきだ」と考えている。
「男性が家事に携わる時間を増やして、家庭および社会における男女平等を進めるべき。そうすれば、もっと子どもは増やせる」(ホーレ氏)。
〔要約は以上 『週刊東洋経済』(2008年1/12号)より〕
〔コメント〕
NHKでも「地球でイチバン お母さんにやさしい国 〜ノルウェー〜」という番組が放映されました。
「かつては男尊女卑の慣習もあったノルウェーが、なぜイチバンお母さんにやさしい国になったのか。“男たちの意識”を変えた大胆な“作戦”とお母さんたちを支える様々な“チエ”を探る」、ということでさまざまな具体的な取り組みが放映されましたが、「ノルウェーでできることは日本でもできる」という出演者の言葉が印象に残っています。