2013.01.02

あきれたなぁ 〜原発事故を防ぐチャンスを捨てた内閣〜

 

 安倍晋三首相は30日、TBSの番組に出演し、原発について「新たにつくっていく原発は事故を起こした(東京電力福島)第一原発のものとは全然違う。国民的な理解を得ながら新規につくっていくことになるだろうと思う」と新設に含みを持たせた。

 

 朝日新聞 DEGITARU 2012.12.31

 上記の報道には正直あきれました。

 安倍内閣は200612月の国会で「日本の原発は(電源喪失事故を引き起こした)海外とは原発の構造が違うから同様の事態が起こるとは考えられない(従って対策は必要ない)」という答弁をしているのです。

 つまり、同じ「電源喪失事故を引き起こす原発」であったのにもかかわらず、違うから大丈夫だと強弁していたわけです。同じ首相が、「新たにつくっていく原発は事故を起こした(東京電力福島)第一原発のものとは全然違う(大丈夫だ)」と主張しているわけですが、信用できますか? あるいは信用することが私たちの未来にとって適切な判断なのでしょうか。

 念のため、2006年、衆議院で安倍内閣に対して出された質問・答弁にリンクをはっておきます。

 ただし、長すぎるので、そのポイントのみ後述します。

衆議院 

20061213日 衆議院議員 吉井英勝
巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書

20061222日 内閣総理大臣 安倍晋三
巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問に対する答弁書

〔質問・答弁のポイント〕 

質問 1−1

 原発からの高圧送電塔が倒壊すると、停止した原発の機器冷却系を作動させるための外部電源が得られなくなるのではないか。

答弁 1−1

 原子炉施設の外部電源系は二回線以上の送電線が用いられている。また、外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも、非常用所内電源からの電力により、停止した原子炉の冷却が可能である。(二重にバックアップされている)

質問 1−4
 海外では二重のバックアップ電源を喪失した事故もあるが日本は大丈夫なのか

答弁 1−4

 海外とは原発の構造が違う。日本の原発で同様の事態が発生するとは考えられない

質問 1−6

 外部電源と内部電源が働かなくなった場合、機器冷却系は働かないことになる原子力安全委員会、原子力安全保安員ではこうした場合の安全性について日本のすべての原発の一つひとつについて調査・検討を行っているか

答弁 1−6

 経済産業省が審査し、その妥当性について原子力安全委員会が確認しているものであり、ご指摘のような事態が起こらないように万全の対応をしている

質問 1−7

 停止した後の原発では崩壊熱を除去できなかったら、核燃料棒は燃損(いわゆるメルトダウン)するのではないか。その場合、原発事故がどのような規模の事故になるのかについてどういう評価を行っているか

答弁 1−7

 お尋ねのような評価は行っていない。原子炉の冷却ができない事態が生じないよう安全の確保に万全を期している。

 

 以上のように、「大地震に伴って全電源が喪失した場合にはどうなるのか」という質問に対して2006年の安倍内閣は「海外の原発と日本の原発は構造が違うから大丈夫だ」、「万全を期しているから、そのような場合については考えていない」という答弁をしているわけです

 2006年時点で、大地震・大津波を想定した対策の必要性が国会において明確に指摘されたことは大きな意味を持っていますこの時点できちんと対応していれば、福島第一原発の事故も防げた可能性があるからですこの対策をとらなかった結果は重大なものだったと言わなければなりません。安倍首相はその責任をどうとるのでしょうか

 「原発の構造が違うから大丈夫だ」、と強弁して新規建設を進めるより前に、しなければならないことがあるのではないですか? (経済産業省も同様ですが・・・)

 

2013.09.15

あきれた話が多い首相

 

「放射能は完全にブロックされている」、「コントロール下にある」

 IOC総会における首相発言に数多くの批判が出されていますが、何といっても重みのあるのは小出裕章氏の発言でしょう 

 「ほとほと呆れました。一体何を根拠にコントロールできていると言っているのでしょうか。冗談ではありません。福島原発は今、人類が初めて遭遇する困難に直面していて、想像を絶する状況が進行しているのです。(・・・)」

 「そもそも、原発政策を推し進めてきた自民党政権は、原発を安全だと説明してきたが、安全神話は事故で崩れた。それなのに『コントロール』なんて、よく言えたもので、本当に恥知らずです。」

 (小出氏へのインタビュー記事の全文

 普段は温厚な小出氏の憤りがよく伝わってきます。

 「対策に責任を持つ」という意思表示はともかく、いい加減なことは言わないでいただきたいですね。

 このたびだけでなく、首相発言には呆れることがしばしばあります。例えば、衆議院議員選挙直後の首相発言(「事故を起こした(東京電力福島)第一原発のものとは全然違う原発」の新設建設にに含みを持たせた発言)にも呆れました。

 原発事故を回避する最大の好機を投げ捨てた責任者があまりにいいかげんなことを言っているのではないか、ということで、私も2013年1月3日に批判記事を公開しています

 

恥知らずといえば原発事故の処理どころか原因解明さえ充分行われていない(地震の揺れによる事故への影響が解明されていない)状況のまま、日本の原発を海外に売り込むというのも相当恥知らずだと思いますが・・・。〕

 

 さて、そもそもこのたび五輪招致をめぐって欧州メディアからの批判が噴出した背景には、「東京電力の破綻処理を回避して、汚染水や事故処理の問題について東電任せにしたまま放置してきた問題」があります。

 確かに、遅まきながら解決に向けて(国際社会の監視も受けつつ)政府が本気で取り組んでいくというのは歓迎すべきことでしょうが、筋道としては「東京電力の破綻処理」が前提になります。そのことに全く触れないというのも、首相としては無責任ではないでしょうか。

 

 それに関する河野太郎氏の見解政府は汚染水問題の対応に国費を投入するんだったら、明確に東電を破綻させないと、政府のお金で東電の株主と貸手を守りますということになるので、極めておかしい)は当然であると考えるのです。

 さて、実際の汚染水処理は「凍土方式」で壁をつくるのにもかなりの期間を要するということですが、それ自体急場しのぎになるかどうか、という対策でしかありません汚染水等に関する根本的な対策を完成させ、廃炉も含めて事故処理を終息させるには、想像できないほどの国費を投入しなければならないわけです

 

 さらに、東日本大震災による被災地の復興、これら(原発事故の根本的な処理も含めて)は「必ず進めていく必要がある事業」です。さらに付け加えて言えば、極端な高温・台風・豪雨が増えている今日、全国各地の水害防止などにも万全の対策をとる必要があります

 天文学的な借金を抱えるこの日本で「五輪に巨費を投じる」ことよりも大切なことが山ほどあるのではないのか、そう感じるのは私だけではないと思うのです。  

 安倍首相としては経済対策の「第四の矢」として何が何でも五輪に乗りたかったのかもしれませんが、IOC総会で「健康問題は『将来も』まったく問題ない」と言い切ったことも含めて、「いいかげんであきれた話」が多いのはいただけません

 

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