現実に向き合う思想に関心のある方 よろしければ…
私は、教育学部の出身なのですが、研究室は社会科の倫理社会(懐かしい呼称…)です。在学中から卒業後にかけて、愛読した思想家はサルトル、マルクス、ルソー、ヘーゲル、竹内芳郎、竹田青嗣、西研、長谷川宏などです。
私がサルトル、そして竹内芳郎氏の著作と「出会った」のは大学の一回生の時です。二人の思想には私なりに本気で向き合い「サルトルや竹内芳郎の思想を現実の中で生きる」ということが、その後の大きな関心事となりました。「一冊の本や一人の思想家との出会いが人生を変えることもある」ということを実感しています。(竹内芳郎氏への手紙)
『国家と文明』はマルクス主義の理論を徹底的に再検討・再構成していった竹内芳郎の力作です。「大切なことはマルクス主義を乗り越えることであって、断じてマルクス以前に舞い戻ることではない」という信念のもと、著者は史的唯物論の徹底的な再構成、独自の国家論の展開をもとに、「文明転換と支配の廃絶」への展望を明らかにしています。
時代と格闘しつつ人類の未来を打開すべく展開された「歴史の全体化理論」。著者の透徹した考察は、貧困や環境問題がクローズアップされる現代において、ますます重要なものとなっています。ぜひ、ご一読下さい。
『人新世の資本論』(斎藤幸平著)を詳細に検討してみました。竹内芳郎が『国家と文明』で構築した視点を土台にしています。
『人新世の資本論』について(気候危機とマルクス主義の観点から)
『文化の理論のために』から宗教論へ
竹内自身が、「みずからの言語理論の成果を踏まえつつこれを記号論にまで拡大させ、あらゆる文化現象をその基底において整除しうる一般記号学を建設し、それによって現代の人類が逢着している文明転換の課題にしっかりした理論的基礎を提供する」ことをめざして書き上げた『文化論』。この野心作についての論考。
『文化の理論のために』、『意味への乾き』(宗教表象の記号学的考察)は、文化や宗教、あるいは人権思想に関して深く考察した竹内芳郎の力作です。「人権思想」や万人平等思想も明らかに人間固有の「文化」であるわけですが、一体これらは、いついかにして人間社会の中に登場したのでしょうか。一般的には西洋近代の「自然権」思想から、といわれますが、上記著作において竹内芳郎はその根源に迫っています。
2013年3月10日、文化人類学者の山口昌男が死去しました。
私は、それほど熱心な読者ではなかったのですが、学生時代、竹内芳郎の『文化の理論のために』と並行して三冊ほど読みました。
内容を理解するにつれて、差別の問題や権力の問題が見えていくような感覚を覚えたものです。
大学三回生のころのレポートが(黄ばんだ状態で)残っていました。よろしければご一読ください。
J.P.サルトルにおける自由と状況
学生時代の私の卒業論文は「J.P.サルトルにおける自由と状況」です。かなりの長文になってしまいましたが、サルトルという思想家にほれ込んで、その時点では最善を尽くして書いたものです。ただし、多少の表現の修正や(注)の付加などは行っています。
J.P.サルトルの『想像力の問題』(想像力の現象学的心理学)の要約・解説です。「想像は知覚の再生ではない」と述べ、「人間が想像するのは人間が自由だからだ」と結論づけています。サルトル思想の一貫したテーマである「自由と状況」の問題がこの著書においてもすでに展開されています。
J.P.サルトルの哲学的主著『存在と無』に関する卒業論文のうち、第3節「行動の問題」だけを抜粋してまとめました。『想像力の問題』で解明した「自由と状況」の問題をより具体化しつつ人間存在の一般論の構築を目指した労作です。
J.P.サルトルが戦後提唱したアンガジュマン(社会参加)の思想と実践について、哲学的主著である『存在と無』、『弁証法的理性批判』とも関連させながら、その歩みと発展をあとづけてみました。
『弁証法的理性批判』にかかわる部分をすべて掲載しました。一気に読むには長すぎる量ですが、『批判』は現代においても充分意義のある著書だと考えています。
「自由と状況」を軸にサルトルの思想的・実践的歩みを総括しておきました。
○「総合学習とサルトル思想」(私の「小論文」) 1999年
「総合的学習の時間」の意義について(サルトル思想と結びつけながら)理論的に追求してみました。
○竹田青嗣への手紙(2006年1月)
竹田青嗣の著作の中で『人間的自由の条件』(講談社)をやや批判的に論じたものです。現代の代表的な思想家の一人である竹田氏の理論とサルトル、竹内芳郎の思想を私なりにつきあわせてみました。
ヘーゲル思想(『精神現象学』の内容)と長野県U高校の実践とを結びつけて考えてみました。200年前にヘーゲルが洞察したことと、現代の教育実践に深く通じ合う点があるというのは興味深いことです。
U高校の「夢の駅前公園づくり」の実践と、「民主主義」の原理を明確化していったルソーの『社会契約論』の内容とを結びつけて述べてみたいと思います。
○コミュニケーション考(小論文)
柄谷行人の『探究T』で展開されていたコミュニケーション論と、竹内芳郎の『言語、その解体と創造』、『文化の理論のために』における言語理論とをつき合わせながら、「コミュニケーション考」をまとめてみました。